セイコーEL330(バッテリーウオッチ)自起動せず

SEIKO EL330修理

 

<整備する時計>

Cal.3303A バッテリー・ウオッチ EL-330

仕様・説明

キャリバー  :3303A

電池     :EPX-77 1.5V(径11.6mm,厚5.6mm)

        電池寿命1年以上

テンプ振動数 :6振動(21600振動/時)

駆動方式   :接点式アンクル駆動方式

製造開始   :1972年(昭和47年)5月 亀戸

 

<故障内容>

テン輪を反時計方向に動かしてやると振りだすが、自動的に動き出さない故障です。技術解説書に従って原因となりえる要因を一つひとつ確認していくことにします。  

 

 

<考えられる要因>

①アンクル分岐点が調整されていない

②ツメ止めバネが強すぎる

③片振り調整できていない

④制動片が接点バネを強く押しつけている

⑤ザラ不良

⑥ドテピン汚れ

 

<修理結果>   

 自起動するEL330と比較してみると、自起動しない方はアンクル分岐の調整の感度が鈍いこと、また片振り幅の調整が機械式時計のように0msを狙って調整されていた。自起動する時計では手持ちのタイムグラファーで片振り幅が4.2msであった。修理する時計での最適なアンクル分岐の調整と片振り幅を4.5msにした結果、自起動率が大幅に改善されました。(電源ONで10回中8回は自起動するようになった。)100%自起動までは調整できませんでしただ、何かしら他の要因が影響しているようです。引き磁石の磁力低下なども要因となりえます。(自起動しない要因については引き続き研究課題とします。)

修理完了時点でのタイムグラファー測定結果は歩度+20s/d、片振り幅4.5ms、振動数21600回/時です。その後の順調に動いています。

<説明>

この電池式腕時計(アンクル駆動式)はほとんどゼンマイ式機械時計と同じ構造です。機械式時計用のタイムグラファーで歩度など測定できま。振動数は21600回/時、片振りは0ms狙いで調整もできますが、意図的に一定方向に一定量ずらす手順になっています。ずらす量は当時のタイムグラファーの機種によって片振り幅が指定されています。IC-70の場合は3.5~5.0mmとなっている。今回は自起動の感度が一番良くなる片振り幅で4.5msに調整ました。

<修理完了>2013-3-15

 

更新:電池で動く電磁テンプ機械式時計→電池式腕時計(アンクル駆動式)に訂正(トンボ出版国産腕時計③参照)