セイコーELNIX(電磁テンプ式)電池寿命3か月と短い

5月にELNIXのデッドストック品に時計店でSR43SWを入れ、使い始めたところ、3ヶ月間で電池切れとなり止まった。電池交換し動き始めたが、時計も1日に約2分遅れるということで修理依頼がありました。

 

3か月で電池切れから計算しますと電池容量は125mAh(125000μAh)、電池寿命3カ月間(3×30×24)hから、消費電流は約58μAとなります。125000μAh÷(3×30×24)h=約58μA

SEIKO ELNIX 仕様>

電池:1.3V 150mAh

寸法:11.6×厚4.2mm

電池型式:354 水銀電池

電池寿命:1年

 消費電流:11μA以下

 

水銀電池は地球環境保護の観点から水銀使用廃止。

日本では1980年代に回収、1995年製造中止

代替電池:SR43SW

消費電流(仕様11μA以下)は機械系の動きの重さに依存します。機械系の動きが重くなると消費電流は増えます。          

下図はSEIKOウオッチ0723A技術解説書の点検手順の一部抜粋です。

点検手順書では、機械系一般の注油や組み付けに加えて、特にテンプとコイルのスキマに鉄粉やケバなどがあり摩擦が生じていないか、逆転止めレバーがツメ車を押さえつけていないか、アンクルの引き磁石に鉄粉がついていないかなど機械系のチェックを指示しています。そこで分解、洗浄、注油、組付調整をすれば消費電流は正常になるだろうと考え、分解掃除し、歩度調整して修理完了と考えて着手しました。

<結果>消費電流はかなり改善されましたが、12~25μAの幅で変動します。仕様は11μA以下ですから1~14μA分大きいです。別の原因がどこかにあります。

分解掃除で58μAが12~25μAに改善されたがまだ、大きい。仕様は11μA以下です。その原因は回路ブロックでした。

手持ちのELNIXの回路ブロック3個、A,B,Cを修理品にのせたところ、いづれの回路ブロックでも11μAを下回る消費電流になりました。

(下図が測定結果です)

電池式時計で消費電流不良の原因が回路ブロックは初めての経験でよい勉強になりました。

注:回路ブロックが不良と特定できたのですが、技術解説書の回路ブロック検査方法では合格になります。トランジスタのスイッチングなど時計を動かす機能はまだ、大丈夫な回路ブロックでした。

電池寿命計算

電池SR43SWが3か月で電池切れになったことから消費電流の計算をすると電池容量は125mAh(125000μAh)、電池寿命3カ月間(3×30×24)hから、消費電流は約58μAとなります。125000μAh÷(3×30×24)h=約58μA

受付時の消費電流を測定しなかったのが悔やまれますが、この程度の値だったと考えられます。今回、回路ブロックの交換で消費電流9.3μAになりましたので電池寿命の計算は125000μAh÷9.3μA÷24h=560日=18ヶ月となります。1年は大丈夫になりました。

 

なお、1日に2分遅れる点は緩急針で調整できました。

文字板上:+2~5秒/日で安定しています。

 

以上で、消費電流と歩度おくれの修理が完了しました。

修理完了:2013-9-15

 

時計修理記録に戻る。

 

<電池式時計のPR>

ELNIXはセイコーの4機種の電池式腕時計の最後の機種で完成度の高い時計です。

・1968年 31エレクトロニック Cal.31A、3102A(有接点アンクル駆動式)

・1970年 37エレクトロニックCal.3702,3A(無接点テンプ駆動式)

・1972年 33バッテリーウオッチCal.3302,3A(有接点アンクル駆動式)

・1973年 07エルニクス 0702,3A(無接点テンプ駆動式)

世界最初の電池式腕時計は1957年、アメリカ、ペンシルベニアのハミルトン時計から発売されたハミルトン・キャリバー500です。Lip、Elgin、Timex、UMF、Landeron、Longines、Junghansなど短い期間とはいえたくさんの素晴らしい電池式時計の世界があります。まだ、始めたばかりですが、すこしづつ、これらの時計修理にも挑戦していくつもりです。