ウオルサム 7石 14サイズ OH後に遅れたり止ったりする。

購入後、すぐにオーバーホールをしたが、その後も、遅れがあり、最近、時々止まるようになった。快調に動かしたいということで修理の依頼をされた時計です。 製造番号が211xxxxxから1917製で今年で97歳を迎える懐中時計です。

不調の原因はホゾ穴の摩耗でした。

写真の赤丸点線の中央がガンギ車上下と四番車の地板側ホゾ穴です。が顕著に摩耗して楕円になっていました。また、ガンギの受のホゾ穴も同様に摩耗しており、半月タガネでホゾ締めの修理痕跡がありました。このため、歯車間の力伝達が不安定で、時計の性能が低下・不安定になっていました。

 

ガンギ車と四番車のホゾは力をもらう歯車から一定方向に押されます。ガンギと四番のホゾは赤矢印向きにホゾ穴にぶつかった状態で回転します。その結果、時計のゼンマイが巻かれ稼働している間はホゾ穴を一定方向に摩耗させ、結果、楕円のホゾ穴になります。この時計は今年で97歳ですが、総稼働時間は莫大なもので、ここまで摩耗したのでしょう。7石の場合、ここには穴石が使用されていませんので、7石ゆえの故障です。

15石ならガンギ、四番のホゾ穴は穴石ですので摩耗して楕円になるということはありません。しかし、一方、穴石は割れたりする故障が起きることがあります。

対策:穴金を180度回転して組み付けることで成功

上図の赤丸点線が3個ありますが、大きさは3か所とも同じで、直径2.9mm×厚さ0.8mmの穴金です。これらをタガネで地板および受から叩きだして、180度回転させて、慎重に叩き込みます。その結果、摩耗していないホゾ穴部分にホゾが当たるようになりますので、新品時の状態になります。この作業の後には丁寧なあがき調整が重要です。適切なあがき量の調整ができますとザラ回りも快調になります。ガンギ車もかろやかに回転し、十分なはね返りの逆回転もみられました。

 

12時上姿勢でのびぶ朗の60秒チャートです。振り角も300度近くあり、素晴らしい性能がでました。

ランニング結果

修理完了したばかりで1回きりのランニング結果ですが以下の通りです。

・持続時間:39時間

誤差  :+1秒24時間、+1秒/36時間

 

アンティーク懐中時計ですがよろこんでいただける性能がでたと思います。

 

<修理完了日> 2014-7-2

 

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