世界水準を抜く ヒゲゼンマイ工場

 仙台精密材料研究所探訪記

有限会社仙台精密材料研究所といっても知る人は少ないかもしれない。しかし、同研究所は服部時計店が熱意と努力で育て上げた我が国が世界に誇る精密ゼンマイ工場である。以下はその探訪記-(昭和35年2月11日)

<画像では読めませんので、一部を書きだしました>

仙台は森の都といわれ金属の研究では数々の業績を残した東北大学があり、これの金属研究所(所長増本博士)は世界的に有名であることは広く知られている。とりわけ所長の増本博士はコバルト、ニッケル、クローム、鉄の合金から作ったコエリンバーヒゲゼンマイの発明者で、博士の研究は内外で高く評価されている。このゼンマイは四年前に発明されたが、これにタングステン、モリブデンなどを加えたものが「エスプレックス」と呼ぶコバルト系の腕時計用ヒゲゼンマイである。これが非常に優秀なもので、服部時計店では量産に踏み切り、昨年四月同社の資本で有限会社仙台材料研究所の設立となったもの。いうなればこの研究所は服部時計店のヒゲゼンマイ工場というわけだ。・・・・従業員は73名(内半数が女性)で月産能力は22~23万個。第二精工舎の腕時計生産規模ではこれだけでは不足なので、残りは輸入して賄っている。

・・・・略・・・・

わが国技術会の最高陣が協力・・・協力したメーカーなどは次の通りである。

▼総合計画および取りまとめに関する事務事項:東京大学生産技術研究所鈴木研究室および第二精工舎

▼圧延機本体設計製作:吉田記念鉄工所

▼精密部品加工:第二精工舎

▼超硬合金製ロール製造:住友電気工業

▼張力制御機構:山武ハネウエル

▼圧延機速度制御:東洋電機

▼電装:幸上無線

▼トルクコンバーター:岡村製作所

▼圧下力計:共和無線

機械本体そのものがわが国初めての高度の機能をもつものであるため、完成までに前後十六回余の全体打ち合わせが行われ、特に東大生研と仙台精密材料研究所代表、第二精工舎研究部佐藤二郎氏、阿部駿氏の協力が大きな原動力となった。

 

 

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